洗剤をめぐる言説には、昭和時代の公害の記憶や商業的なマーケティングが入り乱れ、現代の製品実態と乖離した誤解が根強く残っています。
その筆頭が合成洗剤の環境問題の理由に関する古いイメージです。1960年代から70年代にかけて、琵琶湖をはじめとする河川・湖沼で泡立ちや赤潮が発生し、合成洗剤追放運動が起こりました。しかし、当時の主原因は生分解性の悪い硬質中性洗剤(ABS)と、洗剤の助剤として配合されていた「含リン化合物(ポリリン酸塩)」による富栄養化でした。
現在の日本国内で流通する家庭用合成洗剤は、すべて1980年代半ばまでに「無リン化」が完了しており、界面活性剤も微生物によって速やかに分解される軟質型(LASやAEなど)に完全に置き換わっています。日本石鹸洗剤工業会や環境省のモニタリング調査によれば、適正濃度で使用されて下水処理施設を経由する限り、現代の合成洗剤が水環境へ致命的な悪影響を与えるリスクは極めて低水準に抑えられています。
もう一つの盲点は、「無添加=何が入っていないのかを確認していない」という消費者の心理的トラップです。「無添加」という言葉に法的な統一基準はなく、香料が無添加なだけで合成界面活性剤がしっかり配合されている製品もあれば、着色料だけを抜いて「無添加」と謳っている製品もあります。キャッチコピーのイメージに惑わされず、成分表示の「品名」と「界面活性剤の割合(%)」を自ら読み解くリテラシーが求められます。