宮城・大崎市の古川ラーメンで本当に旨い名店はどこかという問いに対し、舌の肥えた古参ファンと気鋭のフリークの間で常に名前が挙がるのは、対照的な魅力を持つ二つの潮流です。その筆頭が、古川のソウルフードとして君臨する中華そば富士屋古川本店に代表される「古川あっさり中華そば」の文化です。鶏ガラと煮干し、香味野菜を寸胴で静かに炊き上げた琥珀色のスープに、独特の柔らかな細縮れ麺が泳ぎ、脂身の少ない豚モモ肉のチャーシューと細裂きメンマが添えられます。特筆すべきはレンゲを置かない伝統で、丼を持ち上げて直接スープを啜った瞬間に広がる滋味深さは、半世紀以上変わらぬ感動を呼び起こします。
一方で、2010年代以降に頭角を現した麺屋匠や麺屋奏をはじめとする「古川こってりラーメン」の台頭も見逃せません。濃厚な鶏白湯、ガツンと魚介を効かせた豚骨醤油、さらには自家製の極太ワシワシ麺を用いたボリューム満点の限定麺など、若年層や長距離ドライバーの胃袋を鷲掴みにしています。取材に応じた地元製麺業者の担当者は「古川の水質は大崎平野の軟水で出汁が素直に出るため、淡麗から濃厚までスープの旨味成分が濁らずストレートに抽出される」と証言しています。この天恵の水と、米どころならではの厳しい味覚基準が、妥協のない名店を生み出し続ける土壌となっています。