JR熱海駅の改札を出て右手に目を向けると、巨大なアーチを構える平和通り商店街と仲見世通り商店街が並行して伸びている。全長わずか数百メートルの緩やかな坂道に、およそ100店舗以上の飲食店、土産物店、海産物問屋が密集するこのエリアは、熱海観光における絶対的なゲートウェイだ。
地元商店街振興組合の関係者によると、熱海駅の1日平均乗車人員が堅調に推移するなか、来訪者の約7割が到着直後または帰宅前の1〜2時間をこの駅前商店街で過ごすという。限られた空間に多種多様な店舗がひしめく構造が、歩行者の滞留時間を自然と延ばし、「店から店へとハシゴする」という独自の食べ歩き文化を加速させている。
坂を下る動線に位置する両商店街は、昭和の面影を残す干物店や木造の温泉饅頭屋と、洗練された現代風のテイクアウト専門店がモザイク状に混ざり合っている。この「古き良き湯治場情緒」と「感度の高いポップカルチャー」のコントラストこそが、若年層を引きつけ、歩くだけで視覚的・嗅覚的刺激を与える熱狂の根源となっている。