ネット上の情報だけを見ると「ニューヨーク市民全員が生活苦にあえいでいる」と錯覚しがちですが、ここには見落としてはならない重要な盲点が存在します。
第1の誤解は、「現地の給与水準」を無視した議論です。マンハッタンで働く金融業、コンサルティング、大手IT、法律関連のプロフェッショナル層は、20代後半から30代前半であっても年収15万〜30万ドル(約2,250万〜4,500万円)を得ているケースが珍しくありません。彼らにとって30ドルのランチや4,000ドルの家賃は、年収対比でみれば東京の若手会社員が1,000円のランチを食べ、10万円の家賃を払う感覚とほぼ同等です。苦境に直面しているのは、あくまで「固定された日本円ベースの予算で滞在している旅行者・留学生」と「最低賃金近傍で働く現地低所得層」という格差の構図です。
第2の盲点は、「観光地プライス」と「ローカル価格」の乖離です。ミッドタウンやソーホー、ダンボといった観光客密集エリアの価格設定は極端にインフレしていますが、クイーンズのアストリアやフラッシング、ブルックリン南部の移民街に足を延ばせば、10〜15ドル前後でボリューム満点の食事を提供するフードホールやエスニック食堂が今なお存在します。現地をよく知る住民は、徹底したエリアの使い分けによって生活コストを最適化しています。