ネット上の言説やビジネスセミナーで頻繁に取り上げられる「百聞は一見に如かずの続き」。広く流布しているバージョンでは、以下のように6段階のステップとして語られるケースが一般的です。
「百聞は一見に如かず(聞くより見よ)」
「百聞は一考に如かず(見るだけでなく考えよ)」
「百考は一行に如かず(考えるだけでなく行動せよ)」
「百行は一果(あるいは一効・一得)に如かず(行動するだけでなく成果を出せ)」
「百果は一幸に如かず(成果を独占せず他者の幸せに繋げよ)」
「百幸は一皇に如かず(関わる人々全体の繁栄に貢献せよ)」
一連のフレーズは、インプットから思考、行動、成果、社会貢献へと至る見事な階層構造を描いており、人材育成や自己研鑽のスローガンとして強い説得力を持ちます。しかし、歴史的事実として検証すると、この「続き」は古代中国の文献に最初から存在していたわけではありません。
国語辞書編纂者や東洋史の研究データによれば、古代の正史に記録されているのは冒頭の「百聞不如一見」のみです。「百見は一考に如かず」以降の対句は、近代日本の教育者や実業家、あるいは昭和から平成にかけての組織開発の現場で、行動の重要性を説くために創作・付加された派生表現であることが分かっています。古典の権威を借りつつ、後世の人々が「見るだけで満足してしまう人間心理の弱点」を補うために肉付けしていった知恵の結晶と言えます。