アトラ(本名:アトラ=フォーブレイ)は、名門クテンロウの血を引く白虎種とフォーブレイ王家の血脈を持つ極めて高貴な生まれでありながら、生い立ちは悲惨を極めました。遺伝性の奇病によって生まれつき視力を失っており、四肢の自由も奪われ、全身の激痛に苦しむ日々を余儀なくされていたのです。政争に巻き込まれた兄のフォウルとともに国を追われ、辿り着いた闇カジノの街ゼルトブルで奴隷商人へと売却される憂き目に遭いました。
そんな絶望の淵から彼女を救い出したのが、奴隷市場を訪れた岩谷尚文でした。尚文は高価な「ユグドラシル樹液」を調合した霊薬を与え、長年彼女を縛り付けていた不治の病を完全に治癒させます。光こそ戻らなかったものの、自らの足で歩き、外界の温もりを感じ取れるようになったアトラにとって、尚文は文字通り「世界そのものをくれた唯一無二の英雄」となったのです。
ここで特筆すべきは、異父兄であるフォウルとの複雑な兄妹関係です。重度のシスコンであるフォウルは、病弱だった妹を守り抜くことだけを行動原理として生きてきました。しかし回復後のアトラは、過保護な兄の手を振りほどき、自立した一人の戦士として尚文の傍らに立つことを熱望します。献身という名のもとに妹を囲い込もうとする兄と、己の意思で尚文の「盾の守る剣」になろうとする妹の激しい葛藤は、村での共同生活におけるコミカルな日常劇でありながら、後の悲劇への伏線としても機能していました。