この問題は決して遠い国の出来事ではない。日本国内の深刻なドナー不足を背景に、渡航移植を選択する患者が後を絶たない現実がある。ブローカーに数百万円から数千万円の手術費用を支払い、中国の拠点病院へと渡るツアーが存在してきた。
しかし、受け取った臓器の出所が非人道的なルートである場合、患者自身も意図せず重大な人権侵害の共犯関係に組み込まれるリスクを抱える。イスラエル、スペイン、イタリア、台湾などでは、臓器売買に関与する渡航移植を法律で厳格に禁止し、違反者に刑事罰を科す法整備が進んだ。
国際人権問題としての意識が高まる中、日本国内でも渡航移植の実態把握や法規制の強化を求める声が医療界や法曹関係者から急速に高まっている。命を救うための医療が、他者の命を奪う暴力の上に成り立ってはならないという原則が突きつけられている。