形式的になぞられがちな日本の伝統行事ですが、その背景を紐解くと、自然のリズムに寄り添いながら生きてきた先人たちの知恵が色濃く反映されています。
【9月9日:重陽の節句(菊の節句)】
五節句の締めくくりとなる重陽の節句は、奇数(陽の数)の中で最大の「9」が重なるめでたい日であり、同時に陽が極まって陰に転じる警戒の日でもありました。中国の故事に由来し、邪気を祓い不老長寿をもたらすと信じられた菊の花を酒に浮かべた「菊酒」を嗜む風習があります。平安貴族の間では、前夜に菊の花へ真綿を被せて朝露と香りを染み込ませ、その綿で身体を拭って若返りを祈る「菊の被綿(きせわた)」という雅やかな風習が宮中行事として行われていました。
【9月25日:十五夜(中秋の名月)とお月見の食文化】
旧暦8月15日の月を愛でる十五夜は、中国から伝わった観月宴と、日本古来の里芋収穫祭が融合した行事です。そのため十五夜は別名「芋名月」とも呼ばれ、月見団子だけでなく皮付きの蒸し里芋(きぬかつぎ)をお供えするのが本来の正式な作法です。団子の数は十五夜にちなんで「15個」、あるいは1年の満月の数から「12個(閏年は13個)」を三方にピラミッド状に積み、ススキを添えます。ススキは稲穂の代わりであり、鋭い切り口が魔除けになると信じられてきました。
【片見月を避ける「十三夜」の重要性】
旧暦9月13日の月を愛でる「十三夜(後の月)」は日本固有の風習で、2026年は10月23日(金)にあたります。十五夜の月を鑑賞したならば、十三夜の月も同じ場所で見上げなければ「片見月(片月見)」と呼ばれ、縁起が悪いと忌避されてきました。十三夜は栗や豆の収穫期にあたるため「栗名月」「豆名月」とも称され、栗ご飯や茹で枝豆を供えるのが習わしです。
【秋のお彼岸とおはぎの由来】
秋分の日を中日(ちゅうにち)とする前後7日間(2026年は9月20日〜26日)は秋のお彼岸です。太陽が真東から昇り真西に沈むこの時期は、西方十万億土にあるとされる極楽浄土(彼岸)と現世(此岸)が最も通じやすいとされ、先祖供養を行ってきました。お供え物の定番である「おはぎ」は、秋に咲く萩の花に見立てて名付けられたものです。春の彼岸に供える「ぼたもち(牡丹餅)」と素材は基本的に同じですが、小豆の赤い色には古くから魔除けの力があると信じられ、邪気を払い祖霊を慰める意味が込められています。