事故の背景には、インディーズバンドとして泥臭く全国を駆け巡っていた過酷な移動スケジュールと、現場となった道路の極めて危険な構造がありました。事故発生に至る詳細な経緯を整理します。
当時、斎藤恭央さんが率いていた女装ヴィジュアル系ロックバンド「美女♂men Z」は、翌10月6日に熊本県荒尾市の商業施設で開催される音楽イベントへ出演する予定でした。東京から熊本まで約1,200キロメートルにおよぶ長距離を、事務所のサポートに頼り切ることなく、メンバーとスタッフが交代でハイエースを運転して自走していたと報じられています。
現場はドライバーの間で「中国道の難所」として知られるエリアでした。カーブの先が下り坂になっており、雨天時にはタイヤと路面の間に水膜ができるハイドロプレーニング現象が発生しやすい特徴がありました。スリップして中央分離帯に激突したワゴン車は追い越し車線を塞ぎ、直後の薄暗い視界の中で後続車両からは視認が著しく困難な状態となっていたのです。