実際のビジネス現場において、「責任を負いかねます」というフレーズはどのような火種を生んでいるのでしょうか。カスタマーサポート、BtoBの受託開発、および社内コミュニケーションの現場から寄せられた声をもとに検証します。
ある大手通信系企業の顧客相談窓口担当者は、次のように振り返ります。「規約上はどう見てもお客様側の過失であっても、冒頭から『規約に基づき当社では責任を負いかねます』と返信した案件は、高確率で二次クレームへ発展しました。『責任の所在を聞いているのではなく、どう対処すればいいかを相談しているのに冷たすぎる』と激怒されるケースがほとんどでした」。
また、ITプロジェクトの現場でも同様の摩擦が見られます。仕様変更の協議において、受託側のリーダーが「その変更による納期の遅延について弊社は責任を負いかねます」とメールを送ったところ、発注元の上層部から「パートナーシップを放棄した無責任な姿勢」と問題視され、契約更新の見直しにまで及んだ事例が報告されています。
これらの実例が示しているのは、「事実としての責任の有無」と「相手に対するコミュニケーションの温度感」を混同してはならないという教訓です。伝えるべき法的な線引きがあったとしても、伝え方のトーンを誤れば、本来守るべきだった信用そのものを失ってしまうリスクを孕んでいます。