「尾原ダムが干上がりかけているらしい」——こうした噂の発端を検証するため、まずは国土交通省が公表する「川の防災情報」および出雲河川事務所の最新観測データを照合しました。現在記録されている主要な数値は、貯水位188.15m、貯水量約10,019千m³となっています。この数値に対し、生活用水や河川維持用水として確保されている貯水率(利水容量)は56.2%を記録しており、前週比でも約1.4ポイントの上昇を示すなど、極端な渇水状況とは明確に異なる推移を辿っています。
島根県内で公表されている主要5基のダム諸量データと比較しても、尾原ダムの貯水水準は上位2番手につけており、平年同期と照らし合わせても「やや低めの安定運用水準」に収まっています。全流入量は1.64m³/s、全放流量は1.01m³/sと、上流からの流入が放流を上回る均衡を保っており、下流への安定的な環境流量を維持しながら徐々に蓄水を進めている段階です。
それにもかかわらず、なぜネット上では「尾原ダムの水位が底をついている」というセンセーショナルな言説が独り歩きしてしまうのでしょうか。その根底には、防災インフラ特有の統計指標に対するリテラシーの断絶が存在します。