アサギマダラが好む花はフジバカマだけではありません。キク科ヒヨドリバナ属を中心とした特定の植物群に強い誘引性を示します。ここでは、飛来を狙う上で知っておくべき主要植物の特性と、類似植物の見分け方を整理します。
まず押さえておきたいのが、自生種として山野に多く見られるヒヨドリバナです。フジバカマと同属であり、同様にPAを含有するためアサギマダラが頻繁に吸蜜に訪れます。両者の決定的な見分け方は「葉の形状」にあります。ヒヨドリバナの葉は卵状長楕円形で縁に鋸歯(ギザギザ)がある単葉であるのに対し、在来のフジバカマは葉が深く3つに裂ける三裂葉の形状を取るのが大きな特徴です。
また、家庭菜園の野菜としても親しまれるキク科のスイゼンジナ(水前寺菜・金時草)も、強力な蜜源植物として知られています。スイゼンジナもPA成分を含み、秋口にオレンジ色の頭状花を咲かせるため、庭先での誘引プランツとして非常に高い実用性を誇ります。
一方、成虫が吸う花蜜と、幼虫が食べる植物(食草)は全く異なる点に注意が必要です。幼虫はキョウチクトウ科(旧ガガイモ科)のキジョランなど幼虫の食草(テイカカズラ、イケマ、カモメヅルなど)を食べて育ちます。幼虫期には植物中の強心配糖体を体内に取り込んで毒化し、成虫期には花蜜からPAを補給するという、生涯にわたる徹底した二段構えの毒素戦略を構築しています。