医療現場や公的文書で日常的に用いられる「基礎疾患」という単語ですが、辞書的な定義と行政上の位置づけには明確な文脈が存在します。デジタル大辞泉などの辞書学的解釈によれば、基礎疾患とは「ある病気や症状の原因となる病気」と定義されています。たとえば、血管に慢性的な負荷をかける高血圧症や脂質異常症、糖代謝異常をきたす糖尿病は、虚血性心疾患や脳血管障害を引き起こす「土台の病」という意味で基礎疾患に位置づけられます。
医療用語集や臨床の現場ではさらに踏み込み、「患者が元々抱えている慢性疾患や健康状態であり、新たな病気にかかった際や手術を行った際の予後に著しい影響を与えるもの」として扱われます。つまり、単独で存在する疾患という側面に加え、外部から侵入するウイルス感染症や侵襲性の高い外科手術に対して、生体の防御機能や回復力を低下させる脆弱性の因子として捉えられているのです。
ここで多くの人が混同しやすいのが、「持病」「基礎疾患」「原疾患」の3つの言葉の使い分けです。医療情報サイト「アスクドクターズ」の解説や臨床医の指摘によると、これらは似通ったニュアンスを持ちながらも使用される文脈が厳密に異なります。
「持病」は、医学用語ではなく一般的な日常語であり、腰痛や偏頭痛、軽度の冷え性などを含め、本人が長期間付き合っている自覚症状全般を指します。一方、「原疾患」は特定の病態や続発症が生じた際、その大元となった原因病名を指す医学用語です。たとえば「糖尿病性網膜症」を発症した場合、原疾患は「糖尿病」となります。
これに対し、行政や医療政策における基礎疾患厚生労働省基準では、感染症の流行時や公的介入が必要な局面において「重症化を予防すべき集団」を画定するための実用的なクライテリアとして定義されています。具体的には「通院や入院をして治療を受けていること」を前提条件として課すケースが多く、単に診断名がついているだけでなく、現在進行形で医学的管理下に置かれているかどうかが決定的な分水嶺となります。