親権をめぐる争いにおいて、もうひとつの極めて重要な境界線が「子どもの年齢」です。法務省の関連統計や家事事件手続法第152条第2項の規定により、親権者の指定や変更の審判において、子どもが15歳以上の場合には家庭裁判所がその意見を聴取しなければならないと義務付けられています。
乳幼児期から小学校中学年(およそ10歳前後)までの親権争いでは、従来の育児を担当してきた親を優先する「継続性の原則(監護の継続性)」や「母子優先の原則」、兄弟姉妹を引き離さない「兄弟不分離の原則」が厳格に適用されます。司法統計を見ても、裁判所を通じた離婚における親権の母親割合は約85〜90%と圧倒的多数を維持しており、父親側の親権獲得割合は10〜15%前後に留まってきました。
しかし、子どもが15歳という節目を迎えると力関係は激変します。15歳に達した子どもは事理弁識能力(物事の理非善悪を判断する能力)が十分に備わっていると法的に評価され、家庭裁判所の調査官調査や意向聴取において「自分はどちらの親と暮らしたいか」を自らの言葉で述べることができます。この年齢に達した子どもの明確な意思表明は、それまでの監護実績を凌駕する強力な証拠となり、実質的な決定打として機能します。
なお、親権は日常的な養育や居所指定を行う「身上監護権」と、預貯金や契約行為を管理する「財産管理権」の2つから構成されています。実務上は監護権と親権の違いを明確に分け、父親を親権者(名義・財産管理)、母親を監護権者(同居して日常の養育を担当)と分属させる選択肢も存在しますが、近年の実務では子の福祉の観点から分離指定を避ける傾向が強まっています。