生理前の不調を総称して「PMS(月経前症候群)」と呼びますが、身体症状(下腹部痛、乳房の張り、むくみなど)よりも抑うつ、不安、突発的な号泣といったPMS精神症状が突出している場合、医学的には「PMDD(月経前不快気分障害)」という明確な治療対象疾患として区別されます。
米国精神医学会の診断基準(DSM-5)でも正式に独立した気分障害として位置づけられており、排卵のある女性の約3〜8%が罹患していると推計されています。単なる月経前の不快感とPMDDの境界線は、「感情のコントロール不能によって社会生活や人間関係に客観的な破綻が生じているかどうか」にあります。
PMDDの当事者からは、「生理の2日前から自分が無価値な存在に思えて仕方がなくなり、お風呂場で過呼吸になりながら泣き続ける」「配偶者や子どもに対して理性を失った激しい怒りをぶつけてしまい、その直後に凄まじい自己嫌悪で涙が止まらなくなる」といった痛切な証言が寄せられます。月経の開始とともに、あるいは月経終了数日以内にこれらの精神的激痛が嘘のように霧散する点も、定型的なうつ病とは異なるPMDD月経前不快気分障害特有の臨床像です。