コールドブリューをめぐっては、ネットやSNS上で科学的根拠の乏しいライフハックが拡散されています。その最たるものが「常温で半日置いてから冷やすと濃くておいしくなる」という言説です。
これは食品衛生および抽出科学の観点から、非常に危険な誤解と言わざるを得ません。夏場の室内温度(25〜30℃前後)で常温抽出を行うと、抽出スピードは加速するものの、コーヒー液中の遊離脂肪酸が急激に加水分解を起こします。さらに、コーヒー粉は農作物であり完全な無菌状態ではありません。常温の水に長時間浸すことは、微生物やセレウス菌などの細菌が増殖する絶好の環境を作り出すことと同義です。常温抽出を行う場合は最長でも3時間程度にとどめ、基本は最初から冷蔵庫で管理するのが鉄則です。
また、「一度使ったパックにもう一度水を注いで2番出しができる」という節約術も大きな間違いです。水出しの1回目の抽出で、旨味やアロマなどの可溶性成分の約90%以上はすでに溶出しきっています。2回目の抽出で出てくるのは、粗悪な苦味成分とセルロースのえぐみ、そして酸化した油分だけです。胃腸への負担を増やすだけでなく、コーヒー本来の風味とはかけ離れた液体になるため、再利用は絶対に避けましょう。