ネット上には「ペットボトルに水を入れて挿しておくだけで無限に増える」といった甘い言葉が散見されますが、植物生理学の観点から言えば、それは明白な誤りです。パセリの水耕栽培をペットボトルで試みて失敗する原因を分析すると、その8割以上が「根の窒息」と「光合成を阻害する雑菌・藻類の繁殖」に起因しています。
土壌栽培と異なり、水耕栽培の根は水中に溶け込んでいる溶存酸素を直接呼吸に利用します。ペットボトルに水を並々と注ぎ、植物の根元まで完全に水没させてしまうと、根は数日で酸欠状態に陥り、細胞が壊死して根腐れを起こします。植物の根は「水分を吸う部分」と「空気中の酸素を取り込む部分」を分担して機能しているため、根の全長の3分の1から半分程度は常に空気に触れさせる空気層を確保しなければなりません。
さらに、透明なペットボトルをそのまま使用すると、培養液に太陽光や室内光が直接当たり、数日で緑色のアオコ(藻類)が大量発生します。アオコ自体は植物の毒ではないものの、培養液中の養分を奪い合い、死滅したアオコが腐敗することで培地のスポンジ周辺に白カビや病原菌を呼び寄せる温床になります。パセリの水耕栽培でカビ対策を徹底するには、ペットボトルの外側をアルミホイルや遮光テープで完全に覆い、根系と培養液を完全な暗黒状態に保つことが防衛ラインとなります。
また、日本で親しまれている葉が細かく縮れた「モスカールパセリ」と、平葉で香りが豊かな「イタリアンパセリ」では性質に若干の違いがあります。イタリアンパセリの水耕栽培は縮れパセリに比べて発芽後の生育スピードが速く、根の張りが旺盛なため、密閉度の高い小型容器では根詰まりを起こしやすい傾向があります。どちらの品種であっても、容器内の換気と酸素供給を計算した設計が欠かせません。