デシリットルを巡っては、世代間のギャップや国際ルールの変遷に伴う「誤解」も数多く存在する。大人が自分の子どもの教科書を見て最も驚くのが、「記号の書き方」の違いだ。
なぜ「d」は小文字で「L」は大文字なのか?
昭和から平成初期に義務教育を受けた世代の多くは、筆記体の「dℓ」や小文字の「dl」と教わったはずだ。しかし、2026年現在の教科書を開くと、例外なく「dL(dは小文字、Lは大文字)」と表記されている。
この背景には、国際度量衡総会(CGPM)における半世紀にわたる表記規律の変更がある。本来、SI単位系において人名に由来しない単位記号は小文字で書くのが大原則(メートル=m、グラム=g)であり、リットルもかつては小文字の「l」と定められていた。だが、タイプライターや初期のコンピューターフォントにおいて、数字の「1」や英語の大文字「I(アイ)」と小文字の「l(エル)」が極めて混同しやすかったことから、1979年の第16回国際度量衡総会で例外として大文字の「L」を使用することが正式承認された。
日本の文部科学省検定教科書でも、平成23年度(2011年度)の改訂前後を契機に、混同を防ぐ目的で筆記体「ℓ」が完全に廃止され、国際標準に準じたブロック体の「L」「dL」「mL」へと一本化された。大人が子どものノートを見て「筆記体で書きなさい」と指導してしまうと、学校現場ではバツをつけられる可能性があるため注意が必要だ。
「デシリットル廃止論」が現実化しない国際的背景
「日本独自のガラパゴス単位ではないか」と揶揄されることもあるデシリットルだが、これも明確な誤解である。ヨーロッパの一部地域(スイス、ドイツ、北欧など)では、ワインやビール、レストランのグラス飲料、料理用の粉類を「1dL」「2.5dL」といった単位で日常的に売買・表記している。
国際単位系(SI)の手引書においても、「デシ(d)」は「ミリ(m)」「センチ(c)」「キロ(k)」と並び立つ公認のSI接頭辞として厳然と位置づけられている。日本国内の流通業界が「mL」と「L」の二者択一を採用しているだけであり、単位そのものが不要物として消え去ったわけではない。