髭が濃い人の身体的・行動的特徴を語る際、必ず引き合いに出されるのが男性ホルモンとテストステロンの存在です。医学的に見ると、髭の発毛を直接促す主犯はテストステロンそのものではなく、体内の酵素「5αリダクターゼ(II型)」と結びついて変換された「ジヒドロテストステロン(DHT)」です。このDHTが毛乳頭細胞のアンドロゲン受容体に結合することで、髭の毛母細胞が増殖し、毛が太く硬く育ちます。
巷で囁かれる「髭が濃い人の性格の真相」について、心理学と内分泌学の双方からアプローチすると、興味深い乖離が見えてきます。ネット上では「性欲が強い」「気性が荒く支配的」「自己主張が激しい」といったステレオタイプが頻繁に語られます。しかし、昭和大学などの臨床研究データによると、血中テストステロン濃度と髭の密度に完全な正の相関は見られず、血中濃度が標準値であっても受容体の感度が高いだけで髭は濃くなります。
取材に応じたメンズメンタルクリニックの院長は次のように指摘します。
「外見から受ける『男性的・威圧的』という周囲のラベリングに対し、無意識に過剰適応して力強く振る舞うか、逆に青髭を隠そうとして内向的・非主張的になるか、二極化する傾向が見られます。性格そのものがホルモンで作られるというより、外見コンプレックスと周囲の視線が生み出す自己認知の歪みが、行動特性を形成している側面を無視できません」
つまり、髭が濃い人の特徴として見られる行動パターンの多くは、生物学的な必然というよりも、社会的な相互作用によって後天的に形作られた防衛機制の一環と解釈するのが妥当です。