『みんなのうた』を語る上で欠かせないのが、子ども心に強烈な恐怖や不気味さを植え付けた「伝説のトラウマ曲」の存在です。ネット上でも定期的にトレンド入りするこれらの楽曲は、一体なぜ作られたのでしょうか。
その筆頭格が、1984年放送の『メトロポリタン美術館(ミュージアム)』(うた・作詞・作曲:大貫妙子)です。軽快なワルツに乗せて美術館での不思議な体験が歌われますが、ラストは「大好きな絵の中に閉じ込められ、ミイラの花嫁になって眠る」という衝撃的な展開を迎えます。岡本忠成氏が手掛けた緻密な人形アニメーションの美しさと相まって、最後の暗転カットに息を呑んだ視聴者が続出しました。しかし、この歌詞の真相は単なる怪談ではなく、「芸術への永遠の憧れと没入」を詩的に表現した極めて純度の高いアート作品だったのです。
また、1985年に谷山浩子さんが歌った『まっくら森の歌』も、独特の浮遊感と不穏なストリングスが印象的な一曲です。「どこにあるか誰も知らない、まっくら森の案内書」という歌詞と、本橋靖昭氏による影絵風アニメーションが融合し、不可思議な異界へと迷い込んだかのような感覚を与えます。怖さの理由は、子ども向け番組でありながら一切の妥協を排した幻想文学的な世界観にあります。恐怖と美しさは紙一重であることを、当時のクリエイターたちは果敢に提示していたのです。