リストの生涯を彩った女性関係は、単なる浮名にとどまらず、彼の創作活動の重要な原動力となっていました。数多くのロマンスの中でも、特に彼の人生を決定づけたのが二人の貴族女性です。
一人目は、作家「ダニエル・ステルン」としても知られるマリー・ダグー伯爵夫人です。妻子ある身であったマリーとリストはスイスへ駆け落ちし、約10年間にわたり事実婚関係を続けました。二人の間に生まれた娘コジマは、後に指揮者ビューローを経てワーグナーの妻となります。スイスやイタリアでの逃避行生活は、初期の傑作ピアノ曲集『巡礼の年』を生み出す直接のインスピレーションとなりました。
二人目は、ロシアの大富豪であったカロリーネ・ツー・ザイン=ヴィトゲンシュタイン侯爵夫人です。知性に溢れ、リストにピアノ演奏の旅程を縮小させて本格的な作曲活動に専念するよう促したのが彼女でした。ヴァイマル宮廷楽長時代の交響詩の量産や大規模な管弦楽曲の完成は、カロリーネの精神的・知的な支えなしには実現し得ませんでした。
リストの女性関係は奔放に見える一方で、相手の知性や精神性を深く愛し、自らの芸術性を高めるための対話を求め続けたプロセスでもありました。女性たちの狂乱に流されることなく、真摯に魂の共鳴を求めたロマンチストとしての気質が、名曲の数々に結実しています。