いま、境内に集う人々の顔ぶれは実に多彩だ。歴史探訪ドキュメンタリーで取り上げられたことを契機に、幕末史の深層を追う歴女たちが熱心に史跡碑へレンズを向けている。かと思えば、欧米からのインバウンド客がスマートフォンの翻訳画面を片手に、市杵島姫命の由緒書きを興味深そうに読み解く姿も見られる。
パワースポット・寺社巡りのブームは単なるスタンプラリー的な消費から、土地の物語を五感で味わう知的な体験へとシフトした。神戸の洗練されたブティック街と、血塗られた幕末の記憶が交錯するコントラスト。そのギャップが生み出す独特の重みこそが、旅慣れた散策者たちの足をこの小さな境内に引き止める最大の磁力なのだ。