邦画配給の二大巨頭である東宝と松竹がタッグを組み、配給体制を敷いたこと自体が異例の事態だった。派手なアクションや漫画原作のエンタメ作品が席巻するマーケットで、あえて人間の機微を丹念に掬い上げる本格的な文芸映画で勝負に出た賭けは、見事な結実を見せた。
国内外の映画祭で高い評価を得てきた是枝裕和監督も、本作の試写を鑑賞した直後、関係者に「これほどまでに人間の哀歓を美しく、残酷なまでにリアルに捉えたヒューマンドラマは近年稀に見る」と賛辞を贈ったと伝えられている。商業的成功と芸術的達成。その両立が極めて難しいとされる現代の映画界において、奇跡的なバランスを成立させた背景には、現場の妥協なきクラフトマンシップがあった。