篠原一男のキャリアにおいて「第1の様式(住宅は芸術である)」を代表する「から傘の家」は、建築面積わずか55.4平米(約16.7坪)という極小住宅です。限られた面積のなかに濃密な空間体験を生み出すその設計手法は、今なお色褪せない鮮烈さを放っています。
最大の特徴は、平面図に見られる完全な正方形プランと、そこから立ち上がる「唐傘(からかさ)」を想起させる放射状の和小屋組です。中央の独立柱から放射状に伸びる登り梁が、ピラミッド状の四角錐屋根をダイナミックに支える架構となっており、構造体そのものが内部空間の圧倒的な主役として機能しています。
間取りの構成も見事です。正方形の空間を田の字型や単純な格子で区切るのではなく、中央にリビング・ダイニングを配し、襖で仕切られた畳の和室、水回りを絶妙なバランスで内包。日本建築の伝統的な「柱と梁」「引き戸の空間連続性」を維持しながら、厳密な幾何学によって抽象化されたモダンリビングへと昇華させています。