全国の国語科教員や人権擁護委員への取材、そしてSNSや知恵袋に寄せられる生徒たちの悩みを分析すると、作文が「凡作」に終わってしまう背景にはある共通した思い込みがあります。それは「立派なこと、道徳的に正しいことだけを書かなければならない」というプレッシャーです。
しかし、実際の人権作文法務省審査基準で高く評価されるのは、非の打ち所がない聖人君子の告白ではありません。むしろ、「他人の痛みに無関心だった自分」「偏見を持って接してしまった後悔」「見て見ぬふりをした弱さ」など、人間らしい揺らぎを正直に開示し、そこからどう成長したかが問われます。
題名も同様です。「差別は絶対に許されない」という優等生的なタイトルよりも、「逃げ出した私の卑怯さについて」という題名の方が、審査員は「この書き手は自分自身の弱さと本気で向き合っている」と直感します。綺麗事でコーティングされた標語を捨て、心の葛藤をそのままタイトルに反映させることが、傑作への第一歩となります。