朝里ダム記念館は、単なる観光資料館にとどまらず、北海道が推進するインフラツーリズム(公共施設を観光資源として利活用する取り組み)の先駆けとして重要な役割を担ってきました。1993年の朝里ダム完成以来、洪水調節や小樽市への水道水供給を担う要衝として機能し、記念館はその重要性を啓発する防災教育のプラットフォームです。
しかし専門的な視点で観察すると、地方の公共インフラPR施設が直面する共通のジレンマも透けて見えます。展示設備の多くは開館当時の構成を色濃く残しており、近年のデジタルサイネージやインタラクティブな体験型展示を取り入れる予算的余地は限られています。限られた維持管理費と人員体制の中で、いかに無料公開を維持し、利用者の安全を確保するかという行政側の苦心が存在します。
無駄な豪華さを排し、治水という過酷な現場の記録を実直に伝え続けている点こそが、この施設の真の価値です。派手なアミューズメント施設を求めるのではなく、生活の根底を支える土木工学の結晶を学ぶ場所として向き合うことが求められます。