眞栄田郷敦を語る上で避けて通れないのが、父・千葉真一という映画界の巨星と、兄・新田真剣佑の存在です。ハリウッドでも名を轟かせたアクションの開祖・千葉真一を父に持ち、容姿端麗な兄が先に日本やハリウッドでブレイクしたことから、デビュー当初は「偉大な一族のサラブレッド」という看板が常に付きまといました。
興味深いのは、兄・真剣佑とのキャリア構築におけるアプローチの明確な違いです。兄がハリウッド超大作『ONE PIECE』をはじめとする海外市場へ果敢に打って出るグローバル志向を鮮明にする一方、弟の郷敦は日本国内の骨太な人間ドラマや作家性の強い映画作品に着実に根を張り、内面から滲み出る泥臭いリアリズムを追求してきました。
父が生前に遺した「本物になれ。小細工の技術ではなく、魂で演じろ」という薫陶は、兄弟それぞれ異なる形で結実しています。兄が父の持つ華麗なスター性と身体能力のスケールを受け継いだとすれば、郷敦は父が秘めていた職人気質の求道心と、役柄に自らを同化させる狂気的なまでの集中力を受け継いだと言えます。二人は互いの活動を深くリスペクトしつつも、過度に群れることなく、それぞれの戦場で己の旗を立てる絶妙な心理的距離感を保っています。