男性メガネ芸人は、選択するフレームデザインによって醸し出すパブリックイメージが明確に分かれます。ここでは代表的なスタイル別に、愛用ブランドや着用理由の深層に迫ります。
黒縁メガネの絶対的アイコン:宮川大輔とおぎやはぎ
黒縁メガネ芸人の筆頭格である宮川大輔が着用しているのは、福井県鯖江市が世界に誇るアイウェアブランド「FACTORY900(ファクトリーキュウヒャク)」のモデル(主にFA-240など)です。独自の油圧プレス製法による立体的でエッジの効いた極太フレームは、宮川の力強いリアクション芸と完璧にシンクロしています。本人は過去の取材で「顔の余白を埋めて表情をハッキリ見せるために行き着いた」と語っており、トレードマークとして長年愛用されています。
一方、ファッショナブルなメガネコンビの代名詞であるおぎやはぎ(小木博明・矢作兼)は、YELLOWS PLUS、MOSCOT、白山眼鏡店などの上質でクラシカルなモデルを巧みに使い分けています。気負わない脱力系漫才とお洒落なアイウェアの親和性は極めて高く、日本の男性芸人に「メガネ=お洒落・知的」というカルチャーを定着させた功労者と言えます。
赤メガネの誕生秘話:山里亮太のセルフプロデュース戦略
南海キャンディーズの山里亮太を象徴する「赤メガネ」。この選択の背景には、自著『天才はあきらめた』でも赤裸々に語られた過酷な戦略がありました。若手時代、自身の「目つきの悪さ」や「内面から滲み出る卑屈さ」を隠すのではなく、あえて奇抜な赤いフレームをかけることで「一目でヤバい奴だとわかるキャラクター」を構築。テレビカメラに抜かれた瞬間に視聴者の記憶へ爪痕を残すための、計算し尽くされた防衛本能的ブランディングでした。
卓越した憑依芸と知性:シソンヌじろう・銀シャリ橋本
演劇界からも高い評価を受けるシソンヌ・じろうは、コントの役柄ごとにメガネを使い分ける職人肌です。プライベートやメインビジュアルではBJ CLASSIC COLLECTIONなどのクラシックフレームを好みますが、ステージ上では中年女性や偏屈な老人など、かけるメガネ一つで完全に人格を切り替える「憑依のトリガー」としてメガネを活用しています。
M-1王者である銀シャリ・橋本直のトレードマークであるウェリントンメガネも、同じくBJ CLASSIC COLLECTIONをベースにした知的なデザインです。上方漫才の伝統である青いスーツにクラシックなメガネを合わせることで、「昭和の正統派漫才師の佇まい」と「現代的なスマートな言葉選び」を見事に調和させています。
令和の賞レースを席巻する若手男性芸人たち
2020年代以降の賞レースシーンでも、メガネを効果的に用いる若手芸人の台頭が顕著です。M-1グランプリ連覇を狙う令和ロマン・松井ケムリは、JULIUS TART OPTICALなどの肉厚なアメリカンヴィンテージ調フレームを着用し、若手離れした落ち着きと包容力を演出しています。また、カベポスター・永見大吾の繊細な丸メガネや、マユリカ・中谷の親しみやすいセルフレームなど、ネタのテイストとキャラクター像を視覚的に補強するツールとして不可欠な存在となっています。