「車体には一切の錆がなく、内装の化粧板も美しいままなのに、バーナーで焼き切られていく……」
長野総合車両センターの解体線沿いや、JR東海の西浜松駅周辺では、211系が次々と重機の餌食となる光景が日常化しました。SNSやネット掲示板上では、配給列車が運行されるたびに「まだ走れるのにもったいない」「なぜどこも引き取らないのか」といった惜別の声や困惑が書き込まれました。
このファンの感情と現実のギャップについて、地方私鉄の車両管理OBは次のように胸の内を吐露します。
「ファンの方々が『まだ使える』とおっしゃる気持ちは痛いほど分かります。ステンレス構体は50年でも持ちますから。しかし、鉄道事業者にとって車両更新は事業継続をかけた博打です。電気代が高騰する中、回生ブレーキの失効リスクが高い旧型車を抱え、直流モーターのカーボンブラシを削りながら保守する人手はもう地方には残っていません。もはや車両は『車体が綺麗だから』という理由だけで選べる時代ではないのです」
SDGsやサステナビリティが叫ばれる昨今において、大量の中古車両がリサイクル前提とはいえ破棄されていく現実。そこには、美辞麗句だけでは解決できない地方交通の厳しい財務基盤と人手不足の壁がくっきりと影を落としています。