ネット空間にはPCOSにまつわる極端な憶測や古い医療情報が溢れており、患者を不要に追いつめています。ここで決定的な誤解を解いておく必要があります。
誤解①:「PCOSと診断されたら一生子どもは産めない」
これは完全な虚偽です。前述の通り、PCOSは「卵巣内に卵子がたくさん残っているのに排卵の出口が硬くなっている状態」を指します。排卵さえ誘発できれば、卵巣機能不全(早発閉経)のように卵子が枯渇しているわけではないため、治療反応性はむしろ高く、治療成功率は不妊症全体の中でも良好な部類に入ります。
誤解②:「性行為を繰り返すと卵巣の嚢胞が悪化・破裂する」
医学的にPCOSの小卵胞は、病理学的な卵巣嚢腫(皮様嚢腫やチョコレート嚢胞など)とは異なり、未成熟な卵胞液の集まりに過ぎません。性行為の刺激によってこれらが悪性化したり、一斉に破裂して腹腔内大出血を起こしたりするリスクは極めて稀です。ただし、排卵誘発注射などを用いて卵巣が著しく腫大している期間(OHSS警戒期)は、卵巣茎捻転の危険があるため医師から性交渉の一時制限が指示される場合があります。
誤解③:「性欲の減退は女性ホルモンが枯渇した証拠である」
性欲が落ちる最大の要因はホルモンの枯渇ではなく、慢性的なプレッシャーや性交痛に対する「予期不安」です。痛むかもしれないという恐怖が防御反射として膣周囲の筋肉(骨盤底筋群)を硬直させ、さらなる挿入痛を生むという悪循環に陥っているケースが大半を占めます。