輪抜け様のルーツは、日本神話の時代にまで遡る「夏越の大祓」にあります。『備後国風土記』の逸話によると、武塔神(スサノオノミコトの化身)が一夜の宿を求めた際、貧しいながらも手厚くもてなした蘇民将来(そみんしょうらい)に対し、「茅(カヤ)で編んだ輪を腰につけておけば疫病を逃れられる」と教え、子孫を災厄から救ったという伝承が始まりです。
かつて旧暦6月(現在の7月前後)は、気温や湿度が急上昇して疫病が流行しやすく、食中毒や農作物の害虫被害も多発する過酷な季節でした。半年間の生活で知らず知らずのうちに身についた罪や穢れ(けがれ)を祓い落とし、本格的な夏を乗り切るための切実な祈りが、現在の神事へと受け継がれています。
高知において「様」付けで呼ばれる背景には、神仏や自然現象に対して親しみと畏敬の念を抱く土佐人ならではの信仰文化があります。子供の頃に家族と手をつないで茅の輪をくぐり、夜店で楽しんだ思い出を持つ県民も多く、単なる宗教儀礼を超えた地域コミュニティの結節点として機能しています。