二階堂ふみという表現者の名を世界に知らしめた決定的な転機は、2011年に出品された第68回ヴェネツィア国際映画祭でした。園子温監督が手掛けた映画『ヒミズ』(2012年公開)において、絶望の淵に立たされる主人公を支えようともがく少女・茶沢景子役を熱演。当時わずか16歳にして、共演の染谷将太とともに日本人初となるマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)を受賞するという歴史的快挙を成し遂げました。
映画関係者や当時の海外メディアは「スクリーンを引き裂くような剥き出しの感情表現」と絶賛。単なる美少女タレントの枠を完全に破壊し、激しい暴力と純粋な愛情が交錯する極限状態を、泥まみれになりながら全身全霊で体現してみせました。関係者の証言によると、当時の撮影現場では過酷なテイクが繰り返される中、一切の妥協を排して役と同化し、カメラの前に立ち尽くす凄気すら漂わせていたといいます。
沖縄出身の母に連れられ、幼少期から名画座や映画館に通い詰めて培ったという「映画への無垢な憧れ」は、この受賞を機に「日本映画を背負う覚悟」へと昇華しました。世界三大映画祭の一つで認められたその才能は、一過性のブームに終わることなく、以後の日本映画界における強固な基盤となっていきます。