世界一画数の多い漢字はどれ?84画たいとや100画超の真実を追う

世界一画数の多い漢字はどれ?84画たいとや100画超の真実を追う

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「たいと」や「𪚥」が日常生活から隔絶した存在であるのに対し、ここ数年で日本人の生活圏に突如として入り込んできたのが、中国・陝西省発祥の幅広麺料理「ビャンビャン麺」に使われる文字です。コンビニエンスストアのチルド食品や冷凍食品パッケージ、中華料理専門店の看板でこの文字を見かけ、思わず立ち止まった人も多いでしょう。

この文字の画数は字体によって多少の揺らぎがあるものの、一般に繁体字で56画から58画とされます。Unicode(ユニコード)の拡張領域(CJK統合漢字拡張G)に収録されたことで、近年デジタル端末でも表示が可能になりました。

これほど複雑な文字がなぜ現代まで残り、親しまれているのか。その理由は「記憶のための仕掛け」にあります。中国現地には、この文字を書き順通りに書くためのリズミカルな口訣(覚え歌)が存在します。

「穴(あなかんむり)に月が寄り添い、言(ごんべん)が中央に立ち、両脇に幺(いとがしら)が並び、下に長(ちょう)と長(ちょう)、その真ん中に馬が駆け込み、心(こころ)を据えて刂(りっとう)を添え、車に乗って辶(しんにょう)で走り去る」

この民謡調のフレーズに乗せることで、庶民は50画を超える難解な構造をすらすらと書き記すことができました。文字の成り立ち自体も、高名な学者や官僚が創出したものではなく、旅の貧しい書生が麺の代金を踏み倒す代わりに店の看板文字として考案したという民話が残っています。つまり、この文字は難解さを競うためではなく、「客の目を引き、語り草にさせる」という極めて商業的・大衆的なプロモーション心理から誕生したのです。

小林 直樹
著者

小林 直樹

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。