股関節を取り囲む関節包の前面に位置する腸骨大腿靭帯は、350kg以上の牽引張力に耐えうる強度を備えています。これが「人体最強の靭帯」と呼ばれる決定的な理由です。寛骨臼の縁にある下前腸骨棘付近から始まり、大腿骨の転子間線へと扇状に広がりながら付着しています。
発見者の名を取って「ビゲロー靭帯(Bigelow靭帯)」、あるいは逆Y字型に二股へ分かれている形状から「Y靭帯」とも呼ばれます。二足直立歩行を行うヒト特有の進化を遂げた部位であり、骨盤の上に上半身が乗った際、股関節が後ろへ過度に倒れ込まないよう強力に支える構造的支柱です。
この靭帯の緊張力のおかげで、人間は過剰な筋力を使わずに背筋を伸ばして直立し続けることができます。しかし、裏を返せば極めて強固であるがゆえに、一度硬縮や短縮を起こすと簡単には緩みにくいという特徴も併せ持っています。