ネット上の情報やSNSでは「桃の縦の線(縫合線)が深いほど甘い」といった俗説が散見されますが、これは植物生理学的に明らかな誤りです。
桃の中央を走る縦の溝は「縫合線(ほうごうせん)」と呼ばれます。理想的な個体は、この縫合線を境にして左右のふくらみが美しく対称であり、溝そのものは深く切れ込んでいないものです。縫合線が深すぎたり、左右の大きさが極端に異なったりする個体は、開花期の受粉不良や生育中の偏った日照、水分ストレスによって細胞肥大が不均衡に起きた証拠です。片側だけが早く軟化して味が落ちる原因になるため、左右対称のなだらかな個体を選ぶのがプロの鉄則です。
もう一つの決定的な目利きポイントが、果皮の表面に現れる「果点(かてん)」と呼ばれる白い斑点模様です。桃をよく観察すると、上部を中心に小さな白い斑点が星空のように散らばっているものが見つかります。この正体は、果実が太陽の光を限界まで浴びて糖度を高めた結果、果皮が内部の成長スピードに追いつけず、気孔が裂けて現れたサインです。果皮にこの果点が多く浮き出ている桃は、高糖度である確率が極めて高く、市場関係者の間でも「当たり桃の絶対条件」として扱われています。