「見れば合同なのは明らかなのに、なぜわざわざ当たり前のことを文章で説明しなければならないのか」「証明の解答を見ると理解できるが、いざ自分で書こうとするとペンが完全に止まる」。大手教育相談窓口や知恵袋、SNSの受験生コミュニティには、夜な夜な切実な悩みが投稿されています。
特に多くの生徒が最初の巨大な壁に直面するのが、中学2年生の秋に登場する幾何分野です。中学2年の数学で証明問題を克服できずに放置した結果、高校数学で登場する背理法や対偶論法、数学的帰納法で完全に脱落してしまう学習者は少なくありません。現場の塾講師は次のように実態を語ります。
「計算問題は『公式に数値を当てはめて答えを出す』という一本道の手続きです。しかし証明問題は、『すでに分かっているゴールへ向けて、客観的な証拠を並べて他人を説得する作業』です。頭の中で使う筋肉が根本から異なるため、計算と同じ感覚で向き合うと、何をどう並べればいいのか皆目見当がつかなくなってしまうのです」
公教育の現場データでもこの傾向は顕著です。公立高校入試の数学における大問(図形の証明)の平均正答率は、計算問題が80%〜90%台を推移するのに対し、完全正答率は20%〜30%台まで急落します。さらに深刻なのは「無解答率(白紙率)」の高さであり、地域によっては受験生の3割以上が1文字も書かずに放棄しているという厳しい現実が存在します。