《タッサの神託者》がプレイヤーに突きつける最大の絶望は、従来の対話型マジックが前提としていた「戦場のクリーチャーを除去すれば止まる」という大原則が通用しない点にあります。このカードのテキストは、戦場に出たときの誘発型能力(ETB能力)として「自分の青への信心の数だけライブラリーの上を見て、その枚数がライブラリーの残り枚数以上ならゲームに勝利する」と規定されています。
過去に存在した《研究室の偏執狂》は常在型能力であり、ライブラリーが空の状態でドローする直前に《流刑への道》や《稲妻》を打ち込まれれば、能力を失って敗北を余儀なくされました。一方、《タッサの神託者》はスタック上に勝利能力が乗った時点で、本体が戦場から追放されようと破壊されようと能力自体は解決されます。たとえ青の信心がゼロに減らされたとしても、ライブラリーの残り枚数が0枚であれば条件(0以上)を満たして勝利が確定するのです。
2026年現在、Wizards of the Coast(WotC)が主導する統率者戦のデッキパワー指標(ブラケット制)の導入や度重なるルール整備を経てもなお、このカードの競技シーンにおける支配率は衰えていません。青黒を含むハイエンドなデッキにおいて、このカードをフィニッシャーに据えない理由はほぼ見当たらないとさえ評価されています。単体コストの軽さ(青2マナ)、隙の少なさ、そして要求されるパーツのコンパクトさにおいて、MTGの30年を超える歴史の中でも突出した特異点であり続けています。