映画『八つ墓村』が日本人の集合的無意識に刻み込んだ最大の要因は、一度見たら脳裏から離れない恐怖シーンの数々です。
最も有名なフレーズ「八つ墓村の祟りじゃ〜っ!」は、1977年版で白塗りの老婆「濃茶の尼」を演じた北林谷栄の怪演によるものです。当時のテレビCMでこのセリフが繰り返し放送され、子供たちの間で大流行した結果、流行語大賞のない時代でありながら国民的流行語となりました。彼女が井戸端で目を剥きながら叫ぶ場面は、映画史に残る怪奇の名場面です。
さらに観客を戦慄させたのが、山﨑努演じる田治見要蔵の狂気の一夜です。頭に2本の懐中電灯を鉢巻で固定し、顔を白く塗りたくり、日本刀とブローニング散弾銃を手にした要蔵が、夜霧の村を疾走しながら村人32人を次々と惨殺していくシークエンス。当時の撮影手記によると、山﨑努はこの異様な出で立ちについて「最初は吹き出しそうになったが、カメラが回った瞬間に鬼神が乗り移った」と語っており、その圧倒的な運動量と狂気は今観ても息を呑む迫力に満ちています。