チキンオーバーライスの起源は、1990年のニューヨーク・マンハッタンに遡ります。エジプト出身の3人の創業者(モハメド・アボエルエネイム、アハメド・エルサイード、アブデルバセット・エルサイード)が、53丁目と6番街の交差点にオープンした屋台(フードカート)「The Halal Guys(ハラルガイズ)」がすべての始まりでした。
当時、マンハッタンの路上で軽食を求めていたのは、長時間の過酷なシフトをこなすムスリム(イスラム教徒)のイエローキャブ(タクシー)ドライバーたちでした。彼らはイスラム法に則って処理された「ハラール(Halal)」の温かい食事を求めていましたが、当時の市内には手軽に買えるホットドッグ屋台(豚肉や非ハラール肉が主流)ばかりで、選択肢が極めて限られていたのです。
そこで創業チームが考案したのが、イスラムの戒律に従った鶏肉やラム肉を独自のスパイスでマリネしてグリルし、香り豊かな長粒種のライスと生野菜とともにプレートに盛るスタイルでした。安価で圧倒的なボリューム、そして何よりスパイシーなチキンと濃厚なホワイトソースが織りなすパンチのある味わいは、瞬く間にドライバーの間で評判となり、やがて深夜勤務のビジネスパーソンや学生、観光客までもが2〜3時間並ぶ世界的カルチャーへと拡大していきました。