長崎の街において、長崎県営バス(赤バス)と長崎バス(青バス)は長年にわたり熾烈な競争を繰り広げてきた宿敵同士でした。同一ルートを数分差で両者が追いかけ合い、互いに乗客を奪い合う光景は昭和・平成期の日常茶飯事でした。しかし、その競争モデルは乗客数の激減と採算性の悪化によって完全に崩壊しました。こうしたなか、2022年以降本格的に進められ、2026年現在において完全に定着したのが長崎県営バスと長崎バスの共同経営です。
この歴史的転換の法的根拠となったのが「地域人口の急減に対処するための独占禁止法特例法」です。通常であればカルテルとして禁止される運賃設定や路線の住み分けを、国土交通省の認可のもとで合法的かつ計画的に進める枠組みが整いました。長崎県営バスの路線再編の真相は、競合による共倒れを回避し、地域の幹線輸送網を死守するための「持続可能な協調戦略」でした。
具体的には、過密だった中心部の重複路線を一本化し、発車時刻を10〜15分間隔の等間隔パターンダイヤへと最適化する調整が行われました。一方で、採算ラインを割り込み続けていた長崎東部や諫早・大村周辺の末端路線、過疎集落を結ぶ赤字系統については、運行主体の整理や路線廃止・縮小という厳しいメスが入ることとなりました。利用者にとっては「乗り慣れた路線が突如整理された」という戸惑いを生む一方で、事業者側にとっては破綻を防ぐための唯一無二の防衛策だったのです。