鎌倉の明月院や長谷寺と並び称され、「東のあじさい寺」の筆頭格として名を馳せる本土寺。松戸市平賀の地に鎮座するこの古刹が、首都圏の並み居る花の名所を凌駕する熱狂を生み出し続ける背景には、単なる植栽規模にとどまらない「地形の美学」と「歴史的建築の重層構造」が存在します。
本土寺は、建治3年(1277年)に日蓮聖人の直弟子である日朗上人によって開創された名刹です。源氏の名門・平賀家の屋敷跡に建てられた境内は、自然の起伏に富んだ谷津(やつ)の地形を巧みに残しています。平坦な庭園に花を並べる一般的な公園とは異なり、斜面を覆い尽くすように咲き誇る紫陽花が、来訪者の視界を上下左右から立体的に包み込む構造を持っています。
現在、境内に咲き誇るあじさいは約5万本に達します。自生種に近い素朴な美しさを持つガクアジサイから、手まりのように丸く咲くセイヨウアジサイ(ホンアジサイ)、純白の花房が雪山のように広がるアナベル、円錐状の花をつける柏葉(カシワバ)アジサイ、そして星屑を散りばめたような墨田の花火まで、10種類以上の品種が境内の至るところに配されています。杉木立が落とす木漏れ日、重厚な五重塔、回廊の朱塗り、そして土の匂いが混ざり合い、視覚と情緒を激しく揺さぶる点こそが、リピーターを惹きつけてやまない核心的価値です。