女優としてキャリアの絶頂期にあった1964年、映画界を揺るがすビッグニュースが駆け巡る。当時の日本映画界で圧倒的なカリスマ性を誇っていた大スター、鶴田浩二との結婚である。華麗なスポットライトを浴びる只中にありながら、彼女は惜しまれつつも芸能界をスパッと引退した。
トップ俳優の妻として、そして家庭を守る母としての道を選んだ彼女。激動の時代を駆け抜ける大スターを陰で支え続けたその半生は、決して平坦なものばかりではなかった。しかし、長女で女優・歌手として活動する鶴田さやかをはじめとする家族は、家庭内での彼女の穏やかで凛とした佇まい、夫への献身的な愛を今も誇り高く語る。表舞台を去って手に入れた静かな誇りこそが、彼女自身の揺るぎない美学だった。