和彫りにおいて、背中は最も広く、かつ象徴的な主作品を描くための特別な領域である。そこに刻まれる主要なモチーフには、それぞれ深い意味と由来が込められている。特に高い人気を誇るのが「龍」だ。天に昇る龍は立身出世や全知全能の象徴であり、水神として災厄を払う守護の役割を担うとされる。
一方で、「鬼」や「般若」の図柄は、邪気を払う降魔辟邪(ごうまへきじゃ)の念や、自らの内に潜む弱さや悪念を抑え込む戒めとして好まれてきた。さらに、中国の古典小説を題材にした「水滸伝」の英傑たちも定番中の定番だ。江戸時代、天才絵師・歌川国芳が描いた『通俗水滸伝豪傑百八人』の武者絵は当時の江戸っ子を熱狂させ、背中一面に壮大な武者や龍を彫り込む空前のブームを巻き起こした。これらの伝統的な図柄は、現在も伝統刺青・和彫りの核心として引き継がれている。