医療情報が溢れる現代においても、水疱瘡に関しては昭和・平成初期の古い認識に基づいた危険な誤解が散見されます。
誤解1:「自然感染して免疫をつけたほうが強い抗体ができるから良い?」
かつては「小さいうちに水疱瘡をもらってお互いにうつし合おう」という、いわゆる“水疱瘡パーティー”のような慣習が存在しました。しかし、これは現代の小児感染症医学において明確に否定されている危険な行為です。
自然感染は常に脳炎や肺炎、二次感染による重い後遺症や死亡のリスクを伴います。さらに、自然感染した強毒株のウイルスは神経節に生涯潜伏し、将来的に重症の帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛(PHN)を引き起こすリスクがワクチン株よりも格段に高くなります。ワクチンによる安全な免疫獲得が圧倒的に合理的です。
誤解2:「かさぶたになれば感染しないから、少し剥がれていても大丈夫?」
「大部分がかさぶたになったから大丈夫だろう」と登園させてしまうトラブルが現場で多発しています。水疱瘡の感染力は非常に強く、たった1つでも中心に浸出液を含んだ水疱が残っていれば、そこから空気中や接触を介して感染が拡大します。自己判断による登園再開は、園内の乳児や妊婦を抱える家庭への重大な感染源となり得るため、必ず医師の診察を受けて判断を仰がなければなりません。
【プロの結論】感染拡大を防ぐ意思決定とワクチン接種の判断基準
感染症対策の観点から、現在どのようなアクションを選択すべきかの明確な判断基準を提示します。
- 今すぐワクチン接種(抗体検査)を検討すべき人:
- 定期接種制度が始まる前の世代(2014年以前生まれ)で、水疱瘡にかかった記憶や記録がない成人
- 将来妊娠を希望している女性およびその同居パートナー(妊娠中の生ワクチン接種は禁忌であるため、必ず妊娠前に接種を済ませる)
- 保育士、幼稚園教諭、小児科・産婦人科勤務の医療従事者
- 家庭内に未接種の乳幼児や免疫不全者がいる家族
- 受診時に特別な警戒が必要な人(直ちに抗ウイルス薬治療を開始すべき対象):
- 思春期以降(13歳以上)で水疱瘡を初発進した成人患者
- アトピー性皮膚炎などの基礎皮膚疾患があり、重症のカポジ水痘様発疹症を併発しやすい小児
- ステロイド薬や免疫抑制剤を常用している患者