川谷拓三を語る上で欠かせないのが、東映京都撮影所の大部屋・悪役俳優たちによって結成された伝説の集団「ピラニア軍団」です。
1975年、川谷拓三や室田日出男を中心に、志賀勝、岩尾正隆、片桐竜次、成瀬正孝ら、煮え湯を飲まされ続けてきた脇役たちが結集。「水槽の底でじっと獲物を待ち、ひとたびチャンスが来れば主役をも食い尽くすピラニアになろう」という反骨精神から命名されました。彼らの熱気と野心に共鳴した山城新伍が後見人となり、菅原文太や映画監督の中島貞夫、渡瀬恒彦らがバックアップを惜しみませんでした。
中でも室田日出男との関係は特別でした。強面で野性味あふれる室田と、どこかコミカルで哀愁を漂わせる川谷。対照的な2人は無二の親友であり、互いの才能を認め合う最大のライバルでもありました。仕事がなく金が尽きれば、ひとつのアパートで酒を酌み交わし、映画への情熱を夜通し語り合ったといいます。
ピラニア軍団はレコードをリリースし、テレビのバラエティ番組や雑誌のグラビアをジャックするなど、映画界の枠を超えた社会現象を巻き起こしました。「主役を引き立てるだけの消耗品」とみなされていた大部屋俳優たちが、結束と強烈な個性によってスターダムへ駆け上がったこのムーヴメントは、昭和の芸能史における最も痛快な下克上劇として今なお語り継がれています。