数あるアニメーション作品の中で、なぜ本作のビジュアルはこれほどまでに壁紙としての需要が高いのでしょうか。ファンの間で圧倒的人気を誇るのは、物語のクライマックスで描かれる「かたわれ時」の山頂シーンと、青と紫のグラデーションに火花を散らす「ティアマト彗星」の飛来シーンです。
新海誠監督は過去の制作手記や特番インタビューにおいて、「風景描写は単なる舞台装置ではなく、言葉にできない登場人物の心象風景そのものとして描いている」と明言しています。東京の四ツ谷・新宿の緻密なビル群と、飛騨の豊かな自然に包まれた糸守町。そして二つの世界が夕暮れの一瞬だけ交錯する「かたわれ時」の光彩は、観る者のノスタルジーを強烈に揺さぶります。
環境心理学の知見に照らせば、人間はパーソナルデバイスを開くたびに無意識の視覚刺激を受け取っています。日常のタスクに追われる現代人にとって、立花瀧と宮水三葉が時空を超えて出会う奇跡の瞬間や、圧倒的なスケールで描かれた天体ショーをスマホのロック画面やPCのデスクトップに配置する行為は、単なる趣味の領域を超え、日常の中に一瞬の情緒的解放感をもたらす心理的アタッチメント(愛着行動)として機能しているのです。