痴漢冤罪における最大の二次被害は、事件直後から発生する第三者によるネット上での私刑(リンチ)です。駅構内での小競り合いを周囲の乗客が無断で動画撮影し、「痴漢を捕まえた」「現行犯逮捕の瞬間」といった扇情的なテキストとともにX(旧Twitter)やTikTokへ投稿する事例が頻発しています。
こうした痴漢冤罪のネット晒しに対する削除要請は、一刻を争います。放置すればまとめサイトや海外サーバーのミラーサイトへ転載され、完全に消去することが不可能な「デジタルタトゥー」と化すためです。プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求および削除仮処分の手続きを弁護士経由で迅速に行い、拡散元となったアカウントを特定して痴漢冤罪に伴う損害賠償請求を行う必要があります。
また、テレビや新聞による痴漢冤罪の実名報道による名誉毀損も深刻な爪痕を残します。警察発表を鵜呑みにした初期報道で実名や勤務先が報じられた場合、仮に不起訴や無罪判決が出ても、無罪の事実が同等の規模で報道されることはまずありません。メディアに対する訂正記事の要求や名誉毀損訴訟は可能ですが、報道機関側には「逮捕当時の警察発表に基づき、公共の利害に関する事実として相当の理由をもって報道した」という抗弁(真実相当性)が成立しやすく、法的な勝訴を勝ち取るには報道過程のずさんさを個別に証明する緻密な法廷闘争が求められます。