インターネット上の掲示板やSNSでは、時に「気合で乗り切った」「一気に捨てたら2週間で治った」という極端な成功体験が武勇伝のように語られます。しかし、専門の医療現場から見れば、事前の準備なしに行う「一気断薬(コールドターキー)」は極めて危険な暴挙であり、絶対に避けるべき行為です。
急激な服薬中止は、脳内の抑制系システムを一瞬で崩壊させます。特にアルコールや高用量の睡眠薬を一気に断った場合、振戦せん妄(意識混濁、激しい幻覚、全身の激震)や痙攣重積発作を引き起こし、最悪の場合は命に関わる危険性すら生じます。仮に生命危機を免れたとしても、過度な神経ショックによって自律神経系が重篤なパニック状態に固定され、軽度だった症状が数年単位の難治性PAWSへと悪化してしまう事例が後を絶ちません。
また、「反跳性不眠の改善期間」に対する誤解も根深く存在します。薬を止めて数日眠れないだけで「もう一生自然に眠れなくなった」と思い詰め、自己判断で服用を再開したり、別の市販薬を過剰摂取したりするケースが多発しています。神経伝達物質のバランスが自然入眠のリズムを取り戻すには、最低でも2週間から1ヶ月程度の適応時間が必要です。最初の数日間の激しい不眠を「想定内のプロセス」としてあらかじめ織り込んでおくことが、不要な絶望を防ぐ分岐点となります。