トルコを巡る言説には、インターネットや日常会話でまことしやかに語られる多くの誤解や錯覚が存在します。特に知っておくべき代表的な盲点を整理しました。
誤解①:「トルコの首都はイスタンブールである」
これは旅行者や地理初心者が最も陥りやすい間違いです。人口約1,600万人を抱える最大都市はイスタンブールですが、正式な首都は内陸部のアナトリアに位置するアンカラです。1923年の共和国建国時、アタテュルクは旧弊なオスマン帝国の宮廷政治と決別し、外国軍の艦砲射撃を受けにくい防衛上の理由から、内陸の地方都市アンカラを新首都に定めました。首都アンカラは地理的にも完全にアジア側に位置しています。
誤解②:「中東の国だからアラブ人と同じ文化である」
トルコを「中東諸国=アラブ国家」とひとくくりにするのは決定的な誤りです。トルコ人の主要民族は中央アジアから西進してきたテュルク系民族であり、公用語のトルコ語はアラビア語(セム語派)とは全く体系が異なるウラル・アルタイ語族に連なる言語です。宗教的には国民の大半がイスラム教徒(スンニ派中心)ですが、世俗主義が浸透しているため、大都市部では飲酒を楽しむ市民も多く、服装も西欧と何ら変わりません。「アラブ文化圏」ではなく独自の「トルコ文化圏」を築いています。
誤解③:「アジアかヨーロッパか、どちらか一方に決めなければならない」
ネット上では「トルコはアジア州なのか、ヨーロッパ州なのか」という白黒をつける論争が散見されますが、この二者択一の思考自体がトルコの本質を見誤る原因です。トルコ人自身、海外に対しては「近代的なヨーロッパの一員」としての顔を見せつつ、内なるルーツとしては中央アジアに連なる「テュルクの誇り」と「イスラムの精神的支柱」を色濃く保持しています。双方の大陸にルーツと領土を持つことこそが、国際社会におけるトルコの外交カードとなっています。