「この構造を鉄で作るのは、想像を絶する難易度です」
岐阜県関市のベテラン刀匠はそう語る。一見シンプルに見える無一郎の鍔だが、金属工芸の視点で見ると極めて緻密な計算が必要とされる。直線と空間が交差する立体構造を崩さず、強度を保ちながら薄く削り出す作業は、ミリ単位の誤差も許されない。
特に金銀のラインを金属表面に埋め込む「象嵌(ぞうがん)」の工程では、江戸時代から続く技術が惜しみなく投入されている。現代の最新CGで描かれたデザインを、何百年も変わらない職人の手技で完璧に再現する。その挑戦自体が、伝統工芸界における大きな話題となった。